「環境に良い」だけでは売れない。循環経済を利益に変えるには

環境への配慮を掲げれば、商品は選ばれるのでしょうか。
内閣府が2026年10月16日に公表した「循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する世論調査」の速報を見ると、答えはそれほど単純ではありません。ごみ問題を重要だと考える人は97.4%に達する一方、購入時に環境に優しい製品を意識している人は42.9%でした。
環境への関心と、実際にお金を払う行動との間には距離があります。この距離を理解せず、「環境に良いから売れる」と考えると、せっかくの取り組みが利益につながらない可能性があります。
関心は高い。しかし、価格には厳しい
今回の調査では、リサイクル材料を使った製品が通常品より高い場合、どこまでの価格差なら購入できるかを尋ねています。
- 1%高まで:16.6%
- 10%高まで:37.3%
- 25%高まで:5.0%
- 25%を超えても購入する:0.5%
- 高くなるなら購入しない:39.2%
環境に配慮した製品であっても、約4割は価格が上がれば購入しないと回答しています。環境価値だけを理由に、追加負担を受け入れてもらうことは簡単ではありません。
リファービッシュ製品やリユース品を購入する理由でも、「価格が安い」が61.5%だったのに対し、「環境に優しい」は17.3%でした。消費者が選んでいるのは、環境配慮そのものというより、そこから得られる経済的な利点だと考えた方が現実的です。
「良いこと」を「買う理由」に翻訳できているか
再生材の使用、回収、再利用、修理しやすい設計には、相応のコストがかかります。そのコストを価格に反映すること自体が間違いなのではありません。問題は、価格差に見合う価値を顧客が理解できる形で示せているかです。
たとえば、同じ環境配慮でも、次のように表現すれば意味が変わります。
- 長寿命化により、買い替え回数と総支出を減らせる
- 修理や部品交換がしやすく、設備の停止時間を短くできる
- 回収サービスがあり、処分の手間や費用を抑えられる
- 再生材の品質基準や保証が明確で、安心して選べる
- 調達先を分散し、原材料価格や供給途絶の影響を抑えられる
顧客が購入しているのは「環境に良い商品」ではありません。費用、時間、手間、不安、供給リスクを減らしてくれる商品です。環境価値は、それらの便益を裏づける要素として初めて強い訴求力を持ちます。
循環経済は、原料調達を守る経営戦略でもある
循環経済は販売面だけの話ではありません。今回の調査では、家電製品やバッテリーなどから資源を回収することが経済安全保障への貢献につながる可能性を「知っていた」とする回答が74.8%でした。
日本はレアアースやレアメタルをはじめ、多くの資源を海外に依存しています。国際情勢、輸出規制、為替、物流の混乱によって、必要な原料が必要な時に必要な価格で手に入らなくなるリスクは、環境問題よりも直接的な経営問題です。
政府は循環経済を国家戦略と位置づけ、2030年に向けた再生材供給目標を設定するとともに、金属やプラスチックの再資源化拠点などへ官民で約1兆円の投資を目指しています。2026年4月に施行された改正資源有効利用促進法でも、対象となる製品・事業者に対する再生材利用計画や定期報告、環境配慮設計の認定制度などが導入されました。
対象企業だけの話と考えるのは早計です。取引先から使用材料、回収方法、再利用可能性などの説明を求められる動きは、サプライチェーンを通じて広がる可能性があります。
利益につなげるための5つの確認
循環経済への対応を検討するときは、次の点を確認してみてください。
- 環境価値を、顧客の費用・時間・手間の削減に言い換えられるか
- 通常品との価格差を、使用期間全体のコストで説明できるか
- 品質、耐久性、安全性への不安を保証や情報開示で解消できるか
- 回収、修理、再利用の手続きを簡単にできるか
- 原料調達や供給安定の面で、自社にも利益が残る仕組みになっているか
環境への配慮は、顧客に負担を求めるための説明ではありません。顧客と企業の双方に経済的な利点が残る仕組みを設計することが、循環経済を事業として続ける条件です。
環境価値だけに頼らない
循環経済という言葉の意味を知っている人は、今回の調査で13.4%にとどまりました。専門用語を前面に出すよりも、「長く使える」「総費用が下がる」「処分に困らない」「供給が安定する」といった具体的な価値を伝える方が、顧客には届きやすいでしょう。
「環境に良い」は、購入を後押しする理由にはなっても、それだけで価格差を超える決め手にはなりません。
循環経済を利益に変えるには、環境価値を経済合理性に翻訳し、製品設計、価格、保証、回収、調達まで一体で考える必要があります。
自社の商品やサービスについて、「良い取り組みなのに価格が伝わらない」「環境対応を利益につなげられない」と感じている場合は、顧客価値とコスト構造を一度分けて整理してみると、次の打ち手が見えやすくなります。個別の検討が必要な場合は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
主な参考資料
※世論調査の数値は2026年10月16日公表の速報値です。確報段階で修正される可能性があります。

