人が足りない。では、無駄な仕事を減らせないか。

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人手不足への対応というと、採用強化や設備投資が最初に浮かびます。しかし、先行きが読みにくく、資金調達コストも意識せざるを得ない今、最初に検討したいのは、いまある仕事そのものの見直しです。

厚生労働省の「労働経済動向調査(2026年8月)」では、正社員等の労働者過不足判断DIはプラス47でした。運輸業・郵便業はプラス61、建設業と学術研究・専門・技術サービス業はプラス59、医療・福祉はプラス55、情報通信業はプラス52、製造業もプラス45です。人手不足は、一部の業種だけの問題ではありません。

労働者過不足判断DIとは、「不足」と回答した事業所の割合から「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値です。数値が大きいほど、人手不足感が強いことを示します。

採用だけで埋めようとすると、競争になる

同調査では、人手不足への対策に何らかの取り組みを行った事業所は67%でした。取り組みの内容は、中途採用の強化が66%、新卒採用の強化が49%、在職者の賃金改善が40%、募集賃金の引き上げが38%です。一方、業務の効率化は42%、省力化投資は12%、外注化は7%、事業の縮小・見直しは4%でした。

採用や処遇改善は欠かせません。しかし、多くの企業が同時に採用を強化すれば、人材獲得競争は激しくなります。採用費と賃金が上がり、入社後の教育にも時間がかかります。仕事の量や進め方を変えないまま人だけを足せば、固定費が増えたのに忙しさは変わらない、ということにもなりかねません。

人を増やす前に、「この仕事は本当に必要か」「今のやり方でなければならないか」を問い直す余地があります。

まず、仕事を5つの視点で見直す

業務改善は、いきなり新しいシステムを入れることではありません。次の順番で考えると、費用をかけずに改善できる余地を見つけやすくなります。

1.やめる

目的が曖昧な会議、読まれていない社内資料、同じ情報の二重入力、慣例だけで続いている承認や報告を洗い出します。「これをやめると、誰が、どのように困るのか」を答えられない仕事は、廃止を検討する候補です。

2.減らす

なくせない仕事でも、頻度、項目数、精度、承認段階を減らせることがあります。毎日の報告を週次にする、全件確認を例外確認に変える、必要以上に細かい資料を簡素化する、といった見直しです。商品やサービスの種類が増えすぎている場合は、採算と手間の両面から整理します。

3.まとめる

発注、データ入力、問い合わせ対応、配送などを、担当者や時間帯ごとにまとめます。少量の仕事を随時処理するより、一定量をまとめて処理した方が、段取り替えや確認の時間を減らせます。

4.移す

仕事を、最も適した人・場所・時間へ移します。現場で判断できることは権限とともに現場へ移し、専門性の高い仕事は必要に応じて外部へ移します。ただし、外注は単なる丸投げにせず、社内で残す判断や知識を明確にしておく必要があります。

5.標準化する

手順書、チェックリスト、ひな型、FAQ、データの命名規則などを整え、特定の人しかできない仕事を減らします。標準化は、人を機械的に働かせるためではありません。判断が必要な仕事へ時間を振り向けるための土台です。

設備投資は、最後に残ったボトルネックへ

仕事を見直した後にも残るボトルネックには、設備やITを使う価値があります。厚生労働白書も、技術は既存業務に付け足すだけでは十分な効果を生みにくく、業務プロセスの見直しと組み合わせることの重要性を示しています。

投資前には、対象業務について「月に何時間かかっているか」「繁忙期に何件を断っているか」「ミスや手戻りにいくらかかっているか」を数字にします。課題を絞り、小規模な試行で効果を確かめてから広げれば、大きな投資の失敗を避けやすくなります。

投資効果を「人員削減」だけで見ない

省力化投資の効果は、人を減らせるかどうかだけで判断するものではありません。人手不足の企業では、減員よりも、残業の抑制、採用難の緩和、受注の取りこぼし防止、納期短縮、品質安定に価値があります。

年間の資金改善額
= 減らせる残業代・外注費・採用費
+ 増産や受注増による限界利益
- 保守料・利用料・返済額などの追加支出

「年間500時間を削減できる」といった時間だけの効果では、資金繰りは改善しません。その時間を売上増、残業削減、欠員補充の回避などにどう結び付けるのかまで考えて、初めて経済効果になります。

補助金があっても、資金繰りは別に考える

2026年9月29日現在、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」の第8回公募は、10月16日が申請締切とされています。対象となる企業にとって有力な選択肢ですが、補助金は原則として、事業を実施し、実績を報告し、補助額が確定した後に支払われます。採択されても、設備代や導入費を先に支払う資金は必要です。

資金調達は、それぞれの性格を踏まえて選びます。

  • 自己資金:手続きは早い一方、運転資金の余裕を減らします。
  • 長期借入:支払いを分散できますが、効果が計画を下回っても返済は続きます。設備の使用期間に合った返済期間とします。
  • リース・サブスクリプション:初期負担を抑えやすい一方、総支払額、契約期間、中途解約条件を確認します。
  • 補助金・税制:最終的な負担を軽くできますが、入金時期や適用要件を確認し、制度がなくても成立する投資かを検討します。

日本銀行は2026年9月、短期金利の誘導目標を1.25%程度へ引き上げました。金利が上がる局面では、投資効果だけでなく、毎月の返済後に手元資金がどれだけ残るかを見る必要があります。

悪い条件でも資金が尽きないか

投資計画は、期待どおりに進む場合だけでなく、条件が悪化した場合でも確認します。少なくとも、次のような試算が有効です。

  • 想定した効果が30%小さかったら
  • 売上が10%減ったら
  • 導入が3か月遅れたら
  • 補助金の入金が遅れ、または想定額を下回ったら
  • 借入金利がさらに上がったら

それでも支払いを続けられ、通常の仕入れや給与の資金を確保できるなら、投資の安全性は高まります。反対に、予定どおりの効果と補助金入金がなければ資金が回らない計画は、規模や時期を見直すべきです。

不確実な時代こそ、金を使う前に知恵を使う

設備投資を否定する必要はありません。大切なのは順番です。まず、やめる。減らす。まとめる。移す。標準化する。そのうえで、なお残るボトルネックに資金を投じます。

この順番なら、投資対象が絞られ、必要資金も小さくなり、導入効果も測りやすくなります。人手不足への対応を「人を増やす話」だけにせず、仕事の設計と資金繰りを一体で考えることが、不確実な時代の経営判断につながります。

自社では何から見直すべきか、投資額と資金繰りをどう組み立てるか。
課題を整理するところからお手伝いできます。必要な際は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。


主な参考資料